「日本人の成人の8割が歯周病」
聞いたことはありませんか?ちょっと怖い数字ですよね。
この数字は事実ですが、大げさに捉えている感じもします。
歯周病の検査は地域歯周疾患指数(CPI)というWHOが提唱した方法で行われています。
- コード0: 健全
- コード1: 出血
- コード2: 歯石沈着
- コード3: 浅い歯周ポケット
- コード4: 深い歯周ポケット
この評価法によると、コード1〜4に当てはまると歯周病にかかっていることになるので、少しの出血や歯石が付いていれば歯周病に分類されてしまいます。健全の方は成人の2割しかいないとのことです。
しかし、歯を失う理由の第1位は歯周病(厚生労働省の2016年の調査では37.1%)なので、歯周病について正しく知り毎日のケアに活かすことは大切です。
今回は、歯周病とはどんな病気なのか、段階別に解説します。
- プラーク沈着〜歯肉炎
- 初期歯周炎
- 中等度〜重度歯周炎
プラーク沈着〜歯肉炎
歯周病の直接の原因は、歯の周りに付着するプラーク(歯垢)に含まれる細菌です。
歯周病は歯周病原因菌が歯の表面にプラークとして、バイオフィルムを形成するところから始まります。バイオフィルムとは花瓶や流しなどにみられるようなぬるぬるした粘着物で、細菌が形成する生物膜です。
歯周病原因菌は主に唾液や血液のタンパク質を栄養源としています。歯周病原因菌はLPS(菌体外毒素)を持っていて、長時間(24〜48時間以上)歯に着いていると歯肉に炎症、出血を起こします。
歯周病原因菌は嫌気性菌(空気が嫌いな菌)が多いので、炎症が起きた歯肉の深くて、空気が少ない所(歯周ポケット)に入り込んでいきます。
この段階の可逆的(炎症が治れば元に戻る)な歯肉の炎症を歯肉炎と呼んでいます。この段階であれば歯ブラシで治ります。
初期歯周炎
歯周病が進行していくとプラークの中の細菌が唾液のカルシウムを取り込み、歯石を形成していきます。
歯石自体には為害作用はありませんが、細菌の住処としての役割をはたします。
歯石は歯ブラシでは取り除けない為、歯科医院で除去する必要があります。
炎症が長期間、そして歯肉深くに及ぶと歯を支えている骨が吸収されてしまいます。細菌が骨を溶かすと表現する場合がありますが、厳密には破骨細胞が炎症から逃れようとして自身の骨を吸収していきます。
中等度〜重度歯周炎
歯周病が進行すると歯と歯を支えている歯肉との隙間(歯周ポケット)が深くなります。そして歯を支えている骨の吸収が進むと、歯が揺れ始め、最後には歯が抜けてしまう。これが歯周病が進行する流れです。
喫煙や糖尿病は歯周病が進行しやすくなるリスクファクターと考えられています。また金属製の冠などをかぶせた歯に隙間があるとプラークが付着しやすくなり、歯周病が進行しやすくなります。咬む力で直接、歯周病が悪化することはありませんが、過度な力は修飾因子として働く為、治療のために歯を削ったり、歯を固定したりすることもあります。
初期の歯周病は症状が乏しい場合もあります。口臭や歯ぐきからの出血が気になる方は、歯科医院で検診を受けてみられてはいかがでしょうか。
出典
厚生労働省 e-ヘルスネット https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp
イラストで語るペリオのためのバイオロジー 山本浩正 クインテッセンス出版株式会社