「歯磨きは食後30分」
先日そんな歯磨き粉のCMを見かけたので、今日は現在推奨されている歯磨きのタイミングを紹介します。
結論としては、「最適な歯磨きのタイミングはお悩みによって違う」です。
以下の症状別の歯磨きのタイミングとその理由を解説します。ぜひご自身とご家族の症状に合わせて参考にしてみてください。
- むし歯ケア
- 歯周病ケア
- 高齢者、持病をお持ちの方のケア
むし歯予防の歯磨き
食後と寝る前に磨くことが大切です。
むし歯はお口の中のむし歯原因菌が食べ物の糖を分解して、酸と菌体外多糖(白くてネバネバしたのりのようなもの)を作り出すことによって起こります。
まず酸によって歯が溶けることで、むし歯は進行します。またのりによって菌の塊を作り出すことによって、うがいの水流や殺菌剤から身を守っています。流し台のヌルヌルのようにバイオフィルムを形成するので、歯磨きで物理的にこそぎ落とす必要が生じます。むし歯の予防を目的とするなら、食後と唾液の分泌が少ない寝る前の歯磨きが効果的です。
一時、再石灰化を阻害するので食後30分は歯磨きをしない方が良いとの報道もされていましたが、現在では小児歯科学会は食後30分後を気にして磨けないよりは、どのタイミングでも磨いた方が良いとの見解を出しています。
歯周病予防の歯磨き
- 1日1回完璧に磨く
- 1日3回磨く、そのうち1回はしっかり磨く
歯周病ケアの歯磨きは、上記のどちらかです。完璧に磨くことは難しいので、1日3回(そのうち1回はしっかり)磨くことをオススメします。
歯周病はむし歯と同じように、歯周病原因菌が歯の表面にバイオフィルムを作るところから始まります。
歯周病原因菌は唾液や血液のタンパク質を栄養とすることで増殖します。歯周病原因菌はLPS(菌体外毒素)を持っていて、長時間(24〜48時間)歯に着いていると歯肉に炎症、出血を起こします。
歯周病原因菌は嫌気性菌(空気が嫌いな菌)が多いので、炎症が起きた歯肉の深くて、空気が少ない所(歯周ポケット)に入り込みます。歯肉の炎症が続くと、歯を支えている骨が炎症から逃げようとして吸収され始めます。
菌が引き起こす炎症が原因とはいえ、歯周病で骨を溶かしているのは自分の細胞です。歯周病の予防、治療を目的とするならば、歯磨きのタイミングはいつでも構いません。完璧に磨けるのであれば、1日1回でも大丈夫です。ただ、完璧に磨くのはとても難しいので、1日3回の歯磨きが推奨されています。
高齢者、持病をお持ちの方のケア
食前、食後、就寝前、寝起きに磨くことが理想です。でもそんなに頻繁に磨くことは難しいと思うので、続けられる頻度で行うことが大切です。磨ける時に、お口の中の悪玉菌の数を減らすように磨きましょう。
お口の中には常在菌として様々な細菌が存在しています。その中の悪玉菌を飲み込むことで、動脈硬化、がん、糖尿病のリスクが高まると言われています。
高齢者の死亡原因5位の肺炎も菌を誤嚥(気管に入ること)することでリスクが高まります。口腔ケアの場合は菌を飲み込むリスクがある食前、寝起きに磨くことが推奨されています。
ただ、加齢により唾液の分泌量が減るので高齢になると、むし歯のリスクも高まります。
食前、食後、就寝前、寝起きに磨くのが理想とはされていますが、なかなか現実的ではありません。
タイミングに神経質になりすぎるより、個人に合った歯磨き習慣続けることが大切だと考えています。